【9作品紹介!】最近読んだweb小説の感想を語るだけ【カクヨム】

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【9作品紹介!】最近読んだweb小説の感想を語るだけ【カクヨム

 

タイトルにある通り、最近読んだweb小説を9作品紹介。

 

作品が公開されているサイトはいずれもカクヨム、ジャンルはバラバラです。

 

ネタバレは極力ありません。気になった作品は各作品タイトルのリンクからどうぞ

 

※「#RTした人の小説を読みにいく」を通じて読んだ作品も含みます。

 

 

 

おすすめweb小説① 『メルカトルワールド』

 

 

【作品情報】

 

『メルカトルワールド』 作者 ドラ・焼キ

 

【紹介文】

 

整序されたカオスで、彼らは何を選ぶのだろうか。

 

二万年前、かつて鉄と火と言霊の文明が栄えていた地球は、その持ちうる文明すべてを自壊に尽くした。そこかしこに火が満ち、爆炎は星核すら砕いたという。
そこで救世神話を紐解けば、「大神アルゴルはこれを救済した。彼は『地球展開』――星を平らに再形成し、『幻想漏出』――神秘の力・『幻想』をもたらしたかわりに、『災火封印』――あらゆる近代兵器を人類から没収し、最後に人類の存続権を試すべく、この世に『ケモノ』を放った」とある。
そして現在、救世暦20020年、世界は4つの生存地域に小国を一つずつ構えるのみとなった。ほかは、ケモノに占拠され人っ子一人残らない。しかし同時に人類の防衛技術も十分向上し、世界は再び広がりも狭まりもしない停滞の時を迎えていた。

 

感想

 

前々から思っているのだけれど、良い意味で作品から作者の人間性というか、"我"が見えない人だよなぁ──と。

 

人によっては(真相はさておき)結構生活感にじみ出てる人いるじゃないですか(笑)

 

あれはあれで魅力だとも思うんですけど。兎角フィクションとして隙が無い印象。

 

こんな勧め方をすると作者様に怒られそうですが、どのエピソードから読んでも物語に"入る"のそれほど苦にならないんじゃないかなと

 

奇をてらおうとするあまり、すこぶる容貌と内面が乖離してるキャラクターがいるわけでもなし、「誰が敵で誰が味方か全くわからないぜ!」という不安定な状態が続くタイプのお話でもないので(個人的にはここが一番本作の舌を巻くところだと思っている。このキャラデザならそういう"魂"が吹き込まれているのだろうなというお約束をある程度踏襲しつつも隙が無いところ。小説に対する本気度が凄い)。

 

ストック溜まった長編小説の目次を見た途端、「コレをイチから読むのか──」と顔しかめてついつい回れ右しちゃうなんて方は思い切って中ほどから読んでみるのも一興かと。

ぶっちゃけ売れてるマンガとかって前知識ナシで十巻くらいから読んでも面白いじゃないですか。

そういう事ですよ。

 

同作者の他作品はこちら

 

 

おすすめweb小説② 『ライブ・アバーヴ・スカイ』

 

 

【作品情報】

 

『ライブ・アバーヴ・スカイ』 作者 私は柴犬になりたい

 

【紹介文】

 

※視点の切り替えが多いです

 

感想

 

作者はエモエモの実を食べたエモ人間だと思います。これTwitterでも云ったな。

 

堂々と胸にクる、言語化し難いものを「エモ」のひとことで括ってしまうこと自体やや乱暴というか如何せん手抜き感は否めませんが、これほど「エモ」という言葉がバスコーイ当てはまる書き手もそういないでしょうし致し方なし。

毎度毎度目の付けどころがエモいので、多分生きざまがエモいんだと思う。

ヤッタゼ。

 

同作者の他作品はこちら

 

 

おすすめweb小説③ 『フラスコで飼う星の話。』

 

 

【作品情報】

 

『フラスコで飼う星の話。』 作者 五水井ラグ

 

【紹介文】

 

E☆エブリスタでちょっとした賞を頂いた短編を数箇所直したものです。

 

2015年10月2日~10月6日、執筆。
2015年10月、E☆エブリスタ妄想コンテスト準大賞受賞。
2016年1月、厳選「妄想」短編特集掲載。

 

感想

 

冒頭から「読解しなくてもいいタイプのヤツじゃん」と直感したそれ。文字列の上に目を滑らせているだけで何だか楽しい。

 

このタイプの作品最大の強みは、読者の読解力がいかに低かろうと「なんかすげぇモン読んだわ」という印象を残せてしまうところ。

 

とどのつまりがつよつよである(作者心としてはいや細かいところまで読めやというのが本音かもしれないが、正直小説に対する賛辞って「なんかすげぇモン読んだ」で充分過ぎると私は考えている)。

 

徒にweb作家歴が長いだけの人間の戯言としてあまり真に受けないでほしいのだけれど、こういう文章を面に出せる人は兎角勇気がある人だというのが私の解釈。あくまで経験則なのだけれど。 

 

この勇気が足りないと漏れなく「説明しなきゃ症候群」に罹患する模様。

かく云う私がそのタイプである。

 

同作者の他作品についてはこちらのブログでも紹介されています。

 

【講評】五水井ラグ「ストロベリーポップキャンディー。」

 

 

おすすめweb小説④ 『Answer』

 

 

【作品情報】

 

『Answer』 作者 辰井圭斗

 

【紹介文】

 

なし

 

感想

 

詩集や短編集って書店の本棚に似ていると思うのですよ。毎度のごとく妄言なので、適当に聞き(読み)流してくれたらこちらとしても気が楽なのだけれど。

 

たとえば、書店に行ったとき本棚を見て「いや、この本の隣にこの本置くぅ?」みたく思うことってありません? 良くも悪くも。配列にそういう独創性が垣間見えると、親近感湧くと云うか、また足を運びたくなると云うか。

 

短編集や詩集に対しても似たようなことが云えて、「ああ、次そういう感じでくるの?」みたいな。お手軽に不意をうたれるって楽しいですよね(我ながら中々のパワーワード)。

 

あとこれはあまり共感してもらえないかもしれないのだけれど、この本が入っていることでこの棚が映える──っていう感覚わかりません? 

 

もっとわかりやすそうなところで云うなら「この作品が収録されていることで文集全体が引き締まる」みたいな、読み手ごとにそういう知った風な口叩きやすい空白の多さも短編集や詩集の魅力だと思う。あんまりオープンにすると嫌われそうだから、自重するけども(笑)

詩って一瞬一瞬を大事にしている人というより、一瞬一瞬を大事にし過ぎている人が書くものみたいな印象があって、読んでいると何だか危うい気持ちになることがままあるのだけれど、何かを削って生み出している人はカッコいいと思う。

 

同作者の他作品はこちら

 

 

おすすめweb小説⑤ 『虚空の寄る辺』

 

 

【作品情報】

 

『虚空の寄る辺』 作者 畦道伊椀

 

【紹介文】

 

『助けたら、助けてもらえる世界』を夢見る少年、直弼レンジは、この世ならざるものを使役する方術、《響法》を生業としていたが、食い詰めて、協会を介さずに、某地方市在所の響法結社《吾妻桜花》から『闇営業』を受注した。 
引き受けたのは、地上げ。散失して久しい某地所の霊的所有権の現所有者を調べ上げ、その権利を《吾妻桜花》に譲り渡すよう按配する。
相棒の響法師、秋月マイカと共に地所に赴いたが、調査を始めた早々、そこに建つ学校共々、その地所が何者かの手によって呪われていることが明らかになる。どうやら依頼主である吾妻桜花も無関係とは知れず、協会による保障のない身分での闇営業は、何ら企みに巻き込まれないとも限らなかった。
陰謀から逃れるために、依頼を切り上げることも出来たが、どうやら呪いの渦中には、そこで友達になった学生、《原田アオイ》もいるらしい。
『助ける決意をした少女』原田アオイを学生共々見捨てて、呪いから逃げるか、その企てに踏み入るか。

 

感想

 

全体的なこなれ感がすごい。第4話の情景描写を「キャハハと、黄色い笑い声。」のみに留めるあたりとか。演出として所謂"文字の壁"(意図的に改行を少なくする。商業作家だと嶽本野ばらさんとかがそう)を用いている方だとは思うのですが、個人的に「ここの密度を高めるのか」と意外に思わされる箇所もあり

 

その辺りの感性の違いを比較するのが面白かったです。

 

タグに「ライトノベル」とある通り、設計は基本親切──第2話『いつもの学校』レオとアキが小さい頃から一緒だったり、ふたりの高校生活がいつから始まったのかといった情報を会話のやりとりのみで読み手に示唆するあたり。とてもライトノベルらしい──なのだけれど、あらすじから恐らく物語の主人公となるのであろう「『助けたら、助けてもらえる世界』を夢見る少年、直弼レンジ」が第5話からようやっと登場するなど少々トリッキー過ぎやしないかと感じる点も。

 

作品紹介文を熟読してやって来た読み手は、むしろ混乱する可能性が微レ存(死語)。

 

散見される「むごいほど」という強調表現が印象的。多分お気に入りの云い回しなのだろうなぁ──とにやにやしながら読ませていただきました。こういうのを持っている書き手は好きです。

 

 

おすすめweb小説⑥ 『ハッピーハッピーバースデー』

 

 

【作品情報】

 

『ハッピーハッピーバースデー』 作者 りう

 

【紹介文】

 

アルバイトを終えた私の携帯電話には、5件の留守番電話メッセージが残されていた。
その時、私は道端に落ちていた姉のキーホルダーを発見する。
不審に感じた私は姉に電話をかけるが、繋がらない。

 

留守番電話を一つずつ聞くごとに、私を、私たちを脅かすものの正体が明らかになっていく。

 

感想

 

web小説が巧い。その一言に尽きると思います。

 

──これで締めくくってしまうと流石に手抜きだと思われそうなので、少々加筆。各回の引きが巧いので、最後まで読ませることにとても長けた作品だと思います。

 

「先が気になるので続きを読みたい!」というよりは「先は大体読めるけどテンポの良さでついつい続きを押してしまう」という印象。これもまたweb小説界隈では重要なテクニックの一つだよなぁと(実際『新着 20:31 お姉ちゃん』の「火薬が弾けるような乾いた音」から先の展開を予測するなという方が困難である)。

 

なので、web小説が巧い。それに尽きます。

 

 

おすすめweb小説⑦ 『奴隷屋の日常』

 

 

【作品情報】

 

『奴隷屋の日常』 作者 坂牧 祀

 

【紹介文】

 

黒い髪に青い目の青年、シリウス

 

彼は戦争によって故郷と家族を失い、拳銃屋と名乗る男性と共に、見知らぬ地であるカレスティア大陸に辿り着いた。

 

その後長い時間を経て出会う、従者兼相棒となる青年。そして、『身内』と呼べる者たち。

 

奴隷屋、萬屋、薬屋、拳銃屋。

 

彼らの毎日に、特別人に話せるような驚きや興奮はない。けれど自分たちと『身内』で成り立つ日々は、なにものにも代えがたい“良薬”だった。

 

感想

 

冒頭「いつも涼やかな音で来客を知らせてくれるドアベル。きちんと清掃が行き届いた店内。~」と続いたときは、これといった理由もないのにとりあえず情景を説明してくるあのタイプかと一瞬身構えてしまったが、続くエピソード「店主と従業員①」で上記のそれが他の奴隷屋にはない『清潔さ』を際立たせる描写──つまりは物語にとって必要な表現であるとわかり、「私が早計でした。すみませんでしたっ!」などと二礼二拍手一礼しました

 

淡々とした文体が中高生の頃に読んでいた時雨沢恵一作品を彷彿とさせます。こと読みやすさという点にフォーカスすると、今回「#RTした人の小説を読みにいく」で集まった作品の中でも随一ではあるまいか。

 

残酷と云えば残酷なのだけれど、下品な残酷さではないところに作者のこだわりを感じます。

 

 

おすすめweb小説⑧ 『永遠の箒星(とわ の ほうきぼし) ― star witch’s story ―』

 

 

【作品情報】

 

『永遠の箒星(とわ の ほうきぼし) ― star witch’s story ―』 作者 破魔 恭行

 

【紹介文】

 

「きっと見つかるよ。お願い事を叶えるのがわたしのお仕事だもん」
星の魔女――それは願いを叶えるもの。

 

‘蒼星’――彼女たちがそう呼ぶ太陽系に輝く青き惑星、地球。
そこに配属された一人の新人『星の魔女』シホ。
人々の願いを叶え、輝石を集める――その使命を果たすべく、彼女は仲間と共に願いを喰らう獣‘クーヴァ’と戦いながら任務をこなしていく。
そんなある日、シホは謎の獣人と遭遇する。シホの母の名を知る‘それ’は意味深な言葉を残し闇の中へと消えていった。
やがて――この出会いは星の魔女たちの運命を大きく変える事態へと発展する。
彼女たちが願いの先に見るものは希望か、あるいは――

 

感想

 

ターゲットとしている読者層が明確に見える一方幅広いので、読んでいて安心感があります。「箒」と「法器」という文字通りの洒落っ気や、切なく儚く消える流れ星の輝きを「刹那く」儚くと記すなどちょっとしたところに感性がひかる。

 

宇宙の描写についてもただきれいな表現を用いるのではなく「コーヒーゼリーに垂らされたクリームみたい」「真っ白な雲が手に届きそう」など、きちんとシホの目を介している気づかいがこまやか

 

「★第一章★ 星の魔女(3)」のラストに控えるストレートなオノマトペも、物語全体がかもし出す雰囲気からとらえると作品そのものの茶目っ気であるような気がします。

 

 

おすすめweb小説⑨ 『EgoiStars:RⅠ』

 

 

【作品情報】

 

『EgoiStars:RⅠ』 作者 紅城楽弟

 

【紹介文】

 

地球からは見えない遠い銀河の中に輝く恒星・海陽(マリンライト)。

 

12の惑星が集まる海陽系で1つの時代が終わりを告げる。

 

3000年以上に渡って海陽惑星系の7割近くを統治していた星間連合帝国が崩壊したのだ。

 

――それから78年後。

 

歴史学者のトーマ・タケダは戦争が起きた理由を探していた。

 

悪逆皇帝から自由と平穏を勝ち取った統合軍。
3000年以上続いた帝国が何故自由と平穏を無くしたのか?
その理由こそが彼の考える戦争の引き金である。

 

その謎を解き明かすため、トーマは最後の皇帝ダンジョウ=クロウ・ガウネリンの生涯を辿っていく。

 

愚弟の皇族として生まれながら
多くの人々に慕われる賢帝となり
やがて世界を徹底に管理する暴君となった男

 

彼の生涯にこそ帝国崩壊の秘密が隠されている。

 

巨大な星間連合帝国

 

女性が主権の握るローズマリー共和国

 

世界中に数多くの信徒を持つ神栄教

 

社会の裏で蠢くマフィアや軍需企業

 

陰謀、野心、愛憎、差別、希望、誇り

 

多種多様な人々が様々な感情の中で繰り広げるSF戦記第一章。

 

感想

 

世界設定の緻密さが最大の特徴。「結局、あの戦争のきっかけは何だったのか?」「つまり皇帝が暴君になった理由こそがこの戦争の正体でもあるのだ」という謎とヒントが歴史学者の考察を介して読者に提示される、しずかな立ち上がりが印象的です。B.I.S検査という遺伝子レベルの才能検査と神通力が共存している世界観もユニーク(もっとも前者はこの世界における社会常識である一方、後者は秘匿されるべき異端の力である模様)。

 

一方で、そのキャラクターの背景、このタイミングでこの量を開示する必要あるのかと疑問に思わされる部分もあり──。現在の所属に至った経緯であるとか、後々のキャラクター同士のやりとりなどをとっかかりに少しずつ明らかになってゆくとかでは駄目なのかなと。

 

余談ですが、全体として硬派な印象が漂う世界観の中、「3340年 『双子の皇子 前編』」の末尾にさらりと投じられる「猫耳幼女」という文言にちょっと笑ってしまいました。

 

SF戦記がお好きな方はぜひ。

 

 

さいごに:おすすめweb小説を読む前に 

最後にお決まりの文言で締めくくりたいと思います。
 
おねがい

本体は上記リンク先の「作品」であり、当ブログはあくまでオマケです。

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ではまた~。